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  • 上野邸

    逗子と鎌倉の市境に近い、緑の大変豊かな紅ケ谷と呼ばれる各戸の奥深くに位置し、北に斜面を背貰って、間口が狭く南北の奥行きが深い敷地に建つ住宅である。 鎌倉の風致地区内であることから、外観は日本の伝統的なささら子下見板張り(1階)としっくい塗り(2階)とした。また室内は登楽や丸柱など木構造を意匠として見せるデザインとしている。 屋根は、多量の落葉への配慮と敷地の奥行きの深さから大らかで単純な切妻屋根とし、2階諸室はその屋根勾配を生かした空間としている。 間口の一番広い道路側には2層攻抜の居間を配置し、屋根勾配なりの登楽と母屋による格子天井、また南北に設けた高窓によりこの家の中心となる明るい空間を生み出した。隣家のプライバシー確保を考えて玄関を南側にとらざるを得なかったが、この高窓によって、充分な光と敷地南側の谷戸の斜面の線を堪能できるように配慮した。 また居間の北側吹抜の2階は趣味の絵画制作のアトリエとし、I階居間がファミリーコンサートの場となる際には2階桟敷席のように使われることも想定されている。 北側斜面の樹林から吹き下ろす涼しい風を北側開口部より建物内に取り入れ、廊下等を介して建物全体に流れるように計画している。また谷戸特有の湿気に対応して、基礎は全面に防湿コンクリートを打ち、ネコ土台による基礎全面からの換気を行っている。 その他、金属屋根の十分な空気層や、壁断熱材、ペアガラスのホサッシの採用により高い断熱性能も備えた。